現物図面化とは プロセスやメリットについて|リバースエンジニアリング
1.現物図面化とは
現物図面化は、リバースエンジニアリングの一つです。通常の製品開発が図面をもとに部品を作り出すのに対し、現物図面化はその逆で、手元にある実物の部品を分析し、そこから設計図や構造を逆算して図面を作成します。具体的には、現物の形状データを様々な方法で測定し、そのデータをもとにCADで新しい図面を作成します。この技術により、たとえ既存の部品に図面がなくても、その部品を複製したり、破損した部分を復元したり、さらには改良を加えて新たな部品として製作することが可能になります。手のひらサイズの小さな部品から、巨大なパーツまで、多岐にわたる対象に対応できます。
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2.現物から図面化までの流れ
1.現物の準備
対象となる部品を測定しやすい状態に整えます。具体的には、汚れやサビの清掃、また非接触式スキャナーを使用する場合は、表面の光沢を抑えるためのスプレーを塗布するなどを行います。
2.測定方法の選定とデータの取得
部品の大きさや形状に応じて最適な測定方法を選び、データを取得します。主な測定方法は下記の通りです。
・手作業計測
比較的シンプルな形状の部品には、ノギスやマイクロメータといった計測器を使用し、寸法を測定します。
・3Dスキャナー
3Dスキャナーには接触式と非接触式があり、それぞれ特徴が異なります。
接触式:プローブで部品の各点に触れて座標を取得することで測定をします。非常に高い精度で測定できる点が特徴です。しかし、プローブが入らない隙間は測れず、複雑な形状だと時間がかかります。
非接触式:部品に触れることなく、カメラやレーザーで表面形状をスキャンし、点群データと呼ばれるデジタルデータを短時間で取得し測定します。ただし、表面に光沢や黒色の部分があると、表面の光沢を抑えるための塗布剤が必要な場合があります。
・写真測量
現物をさまざまな角度から撮影した複数の写真を解析し、立体的な形状(3Dデータ)を再現します。取得したデータは、ノイズの除去や、複数のスキャンデータの統合など、CAD化や図面作成に使いやすいように加工・修正する必要があります。
3.CADソフトでのモデリング
取得したデータをもとに、3DCADを用いて部品の3Dモデルを構築します。手作業で測定した寸法や、3Dスキャンで得られた点群データをもとに、形状を再現し、「ソリッド」と呼ばれるデジタル上の部品を作成します。
※ソリッド:3次元空間上「体積(厚み)をもった実体」として定義された3D形状のこと
4.図面の作成と出力
最後に、完成した3Dモデルから2Dの図面を作成します。CADソフトの機能を使って、部品の正面図、側面図、平面図など必要な投影図を配置し、寸法線や注記を加えます。図面は日本産業規格(JIS)などの製図規則に沿って作成します。
3.現物図面化のメリット
部品の複製・復元・製作が可能
生産中止やメーカー廃業で入手困難な部品を再現できます。新しい設備へ投資するのではなく、古い設備を使い続けることで、設備への投資費用を抑えることができます。
また図面がない破損部品の補修や、スペアパーツの確保がしやすくなるため、予備部品の不足による生産ラインの停止などを防ぐことに繋がります。
部品情報の正確な伝達
複雑な形状の部品でも、JIS製図規格に沿った図面があれば正確な情報が伝わり、関係者間の認識の齟齬の解消につながります。
コストダウンや性能向上
既存部品を測定・解析することで、より高精度な改良版を設計したり、純正品が高価な場合に自社で製作してコストを削減することが可能になります。
技術やノウハウの継承
製造時に職人の技術が必要な部品や、図面が存在しない試作品、他社製品などを解析することで、その構造や構成要素を明らかにできます。職人技の継承や自社での改良開発に役立つ情報を得ることが可能です。
4.現物図面化をする際のポイント
現物図面化をする際には、押さえるべきポイントがいくつかあります。「製造中止部品を図面化してほしい」と依頼をする際には、下記のポイントを押さえた企業に依頼をすることを推奨します。
測定方法や測定環境を整え、精度を確保している
現物図面化の際には、「測定誤差を最小限に抑える」ことが重要です。手作業での計測では、計測器をまっすぐ当てたり、たるませないようにしたりする工夫が求められます。デジタル計測器は定期的に校正を行うことで安定して正確な測定をすることができます。
また対象物の温度変化が寸法に影響することもあるため、可能であれば室温が一定の環境で測定することも必要です。
効率的なモデリングを行っている
CADでのモデル化は、まず部品全体の大まかな外形を構築し、その後に穴あけや面取りなどの細部を追加するといった段階的なアプローチが効率的です。
スキャンデータに不完全な箇所がある場合は、現物を実際に見る、手に取って形状を確かめるなど、その他情報を柔軟に補完することで、効率的に図面化を進めることができます。
法的・倫理的な配慮をしている
リバースエンジニアリング自体は原則として合法です。しかし、作成した図面やデータを商用目的で公開・利用する場合、特許権や意匠権といった知的財産権を侵害する可能性があります。そのため、作成した図面は社内検討用や保守用にとどめ、無断で配布しないよう細心の注意を払う必要があります。必要に応じて許可を取ることも求められます。
ご検討・ご相談の際は「装置・自動機パーツ リバースエンジニアリングセンター」へお問い合わせください
現物図面化などの、リバースエンジニアリングは、製造業において製品開発を加速させ、競争力を強化するための有効な手段となります。「装置・自動機パーツ リバースエンジニアリングセンター」では、現物の図面化などのお悩みについて細かく対応させていただきます。ご検討の際はお気軽にお問い合わせください。